人新世のパンツ論〈花鳥風月編〉
私は「人新世のパンツ論」を3年以上続けてきているが、いまだ、パンツ越しでもお尻を見せるのが恥ずかしい。
だから、なるべくお尻側を見せるのを避けてきたつもりである。もちろんナマの尻はさらさないでおこうと――。
それでもTバックの撮影時などは、うーん、見られたくない…。でもここはちょっと已むを得ないだろうなあと、半ベソをかきながら目を瞑って記録してきたけれど、私のお尻に対する羞恥心は紛れもなく強いのであった。
それはなぜか?
私のお尻に対する強固な羞恥心は、いったい何処から沸き返ってくるのだろうか。
それは肉体の真実の全て
今回からジョックストラップのパンツを紹介していくのだ。
だが迷いも生じていた。「調子を上げるパンツ」の最上級は、やはりどう考えてもジョックストラップのほかはない。が、それをアップしていくには勇気がいる。自分のお尻をさらさねばならない。でもやっぱりまだ、黒いヴェールでそれを覆っていたい――と。
なぜこんなに私は、お尻を見せるのが怖いのだろうか。
お尻。それは、その人の肉体の、“真実”を物語っているから。
つまりは――だ。
はっきりここで申し上げたいのである。なぜ私は、とてつもなくお尻が恥ずかしいのか…。
そもそも思春期の頃からの、基本的な羞恥心というのはあった。誰しもプライベートゾーンは絶対的に恥ずかしいものだろう。
だが、それ以上のこととして、私には恐怖心があった。そのことは学生時代の頃から大人になった以降も変わらぬ“経験則”なのだけれど、男のお尻って、つまり、とにかくキタナイ――。
なにゆえに男尻はそうなのか
男のお尻は汚いし、臭い。
そういうイメージ、というより現実である。だから私は直視できないのだ。
とくに見た目の汚さは、同性のお尻をスーパー銭湯などで見るたびに感慨深く思う。
「お尻」といわず「ケツ」といわれる所以はつまり、お尻の肌の“荒れ”がその具象を指しているのではないだろうか。
“荒れ”の原因は、いくつかある。以下にまとめてみた。
- ①毛が多い…お尻の肉全体にまんべんなく体毛が繁茂している男性が結構多い
- ②摩擦と圧迫…長く座ったりしていて、下着の擦れで肌が黒ずんだり、ざらついたりする。デスクワークが多い人や運転手さんが多い
- ③汗や蒸れ…お尻は通気性が悪く、汗がたまりやすい
- ④毛穴の炎症…ベッド上のダニの死骸や虫刺されも含め、お尻の表面は赤くブツブツができやすい
- ⑤色素沈着…①から④の原因などで、お尻の表面に茶色い跡が残ること
お尻の安息日をたっぷり設けよ
そう、だから、お尻には安息日を設ける必要があり、洗浄した後のアフターケアも欠かせないのだ。お尻の美麗を保つには、お顔と同程度のケアが必須となる。お尻はその人の「第二の顔」と思ったほうがいい。
そんなようなことで、これまで私は“経験則”でキタナイ同性のお尻を見てきたため、自分のお尻もそうなのだ、とレッテルを貼ってきてしまった。だから、見られるのが恥ずかしいのである。自分のお尻の形の悪さ、というのも、もしかしたらその要因になっているのかもしれない。
一般的なお尻の形を明らかにしてみよう。
男性のお尻の形の特徴は、臀部の肉付き(筋肉)がほぼ四角形のように整い、その四辺が均等であること。
女性のお尻の形は、それとはだいぶ違うのだ。ハート型を逆さまにしたような形で、腿に近いところで大きく丸みを帯びている。
男性のお尻は、背中がほぼまっすく垂直に伸びて、臀部の膨らみで稜線ができる。それに対し女性のお尻は、骨盤にかけて緩やかな傾斜があり、男性よりもお尻のサイズが大きく見える。
もちろん男女とも、お尻の筋肉量によって形は様々に変化する。が、おおむね男性のお尻は、真四角な形をしている人が圧倒的に多い。
ここで一つの結論を導き出すことにする。
お尻は、その人がパンツを穿いたスタイルの、定型を為す重要な部位である――。
もしスタイルが悪いのであれば、その原因は腰とお尻の形にこそあって、なんらかの処置による適当な補整が必要になってくる。
ジョックストラップの魔術
今年の初め、カルバン・クライン(Calvin Klein)のジョックストラップが欲しいと思った。青と黒のやつ――。
ピンときたのだ。
日頃、惰性で労働していたり、無意味な学業に取り組んでいたりすると、セックスや性欲に関心を抱かなくなってしまう。そんな時、もし意表を突いてあんな開放的なパンツを穿いたら、どれほど気分が高揚するだろうか――。
その時私が選んだカルバン・クラインのジョックストラップは、“入荷未定”のまま月日が経ち、なかなか手元に届かなかった。
ならばその間、別のメーカーのジョックストラップを試してみようと思い、一つ選んで買ってみた。
同じ青と黒。それをさっそく穿いてみたわけである。
己のお尻
白井カイウと天野洋一原作の漫画に登場する“死神アップル”のように、全身黒のタトゥーでお尻も綺麗――というようなビジュアルを期待されては困る。ジョックストラップを穿けば、おのずと「ケツ」があらわになる。そこはなんとか、黒いヴェールで包み込んでおきたい。
だが、もう隠すわけにはいかない。それに、なんとなく突き出たお尻が美しいのではないか…と。いや、これは虚栄ではなく、慢心だ。
本来的な《男性部》を保護する下着としての生地面を極限まで省き、動きやすい構造を形状化したのが、ジョックストラップのパンツだ。結果的に最も省かれた生地面が、お尻の部分なのであった。
Tバックの場合、股間の割れ目から細い布もしくはゴムの帯が伸びて、腰部帯と接合しているのに対し、ジョックストラップは、臀部の横面から立体フロントの生地面と接合してずり落ちない仕組みとする。
なんとなくフンドシの構造と似ていて、おもわず“西洋褌”といいたいところなのだけれど、既にこの和訳的呼称は、戦後の洋物トランクスの流入期に用いられ、ジョックストラップに対してはそう呼べないのである。ただし、構造としては、まさにほっそりとした“変形フンドシ”なのであった。
黒いヴェールを脱ぎ捨てた勇気を、どうか讃えてほしい。
この瞬間、男の「ケツ」は汚いし、臭い、といっていた自分に降りかかることを、覚悟しなければならない。
もともと、お尻の肉に体毛は生えていなかったのである。しかも「ハイジ男子」を継続しているから、モジャっとした汚さはないのではないかと思っている。尤もそれも、虚栄ではない慢心といえる。
それから、えーと、大丈夫です。いつも「赤ちゃんのおしりふき」を使ってますから、全然臭くないです――。
お尻は下着姿の定型をつくる。見栄えという点では、ここまでが限界である。
限界といっておきながら、次回は、お尻の割れ目部分までを開示しなければならない事態(?)となった。会陰の「蟻の門渡り」とは何かを、わかりやすく説明する必要が生じてきたからだ。
「花鳥風月」は日本人の美意識の在処である。自らの身体の美意識を具象として高めるためには、ジョックストラップのパンツが必然だ。それに加え、お尻のケアが重要になってくる。
ジョックストラップは、変形のフンドシでもある。日常生活に多大な高揚感をもたらす、「調子を上げるパンツ」であることを、くりかえし述べて伝えたい。
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