⑫アメリカンなスキャンティ

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人新世のパンツ論〈花鳥風月編〉

ジェントルマンでいたいなら、パンツに学べ

 

ジョッキーに心奪われ

 

『PLAYBOY』JUNE 1974

 
 私が若い頃にコレクションしていたアメリカの大衆雑誌『PLAYBOY』の“JUNE 1974”号に、JOCKEY(ジョッキー・インターナショナル社)の男性用アンダーウェアの広告が載っていた。
 JOCKEYといえば、歴史的な「Yフロント」(Y-fronts)のブリーフで有名である。
 

ジョッキーの「Yフロント」ブリーフ

 
 これがその「Yフロント」のブリーフ(上画像)。
 フロント部の開き口(前開き)の縫い目ラインが“逆Y字”になっているのが特徴で、この「Yフロント」のブリーフは、1935年に“男性用ブリーフの原型”としてはじめて登場した。
 

ブリーフの歴史はジョッキーから始まった

 ブリーフ誕生の歴史については、「赤いパンツの話〈二〉」で詳しくふれている。そこで登場するシカゴのクーパーズ社(STクーパー&サンズ社)とは、創業者サミュエル・クーパー(Samuel Thrall Cooper)氏が1876年に創業した、ジョッキー・インターナショナル社の前身である。
 
 クーパー氏の夢は最初、良質な靴下を作ることだった。その後ストッキング、ユニオンスーツ――。
 
 男性用の水着のショーツからアイデアが浮かび、下着としてのショーツが誕生する。シカゴのデパートで、またたく間に売れた。そしてまもなく、「Yフロント」のブリーフが開発され、商品化となる。そういう歴史である。
 
 男性用下着として画期的かつ進歩的なデザインであったが、60年代から、ブリーフはさらにローライズ化、スーパービキニ化していき、今日にいたる。
 「赤いパンツの話〈二〉」で私が述べたのは、「ブリーフのミニマムへの追求は、どこかしらで限界が生じるのではないか」ということ。ミニマムのセクシーさはむしろ男性下着が起点だったといっても過言ではなく、ショーツのデザインは、男女とも出尽くしているといっていいのではないか。
 

ジョッキーのブリーフの広告

 

“PLAYBOY”に飾るブリーフたち

 ジョッキーのカラー広告に目を移そう。
 
《BUILD A GREAT
LOOKING WARDROBE FROM
THE INSIDE OUT.》
 
 魅力的な衣装を着るなら、内側から整えよう――。
 ダンディズムのセクシーさは、下着のスタイルとセンスによって醸し出される、とでもいうべき名文で、この場合の“INSIDE”は、単に下着を示しただけではなく、その人の心持ちをも含めていると解釈したい。女性を誘うなら、まずは下着を整えよ、ともいえる。
 
 広告の左の男性が着こなしている、イエローカラーのメッシュ下着(“OUT LIFE INTERNATIONAL SCANDIA”)は、その時代のアメリカンにうってつけのデザインであり、真ん中の男性のカラフルなモザイクタイルのビキニタイプは、スキャンティと呼ばれる。
 
 スキャンティとは、下着デザイナーの鴨居羊子さんの説明を要約すると、こういうことになる。
 
「パンティよりも股ぐりが深いもの。小面積でパンティの機能を果たし、脚が長く見える」
 
 男性アンダーウェアのスキャンティは、まさに脚が長く見え、長身の男が穿けば、さらにセクシーさが増す。しかも《男性部》が極端に強調されることもあって、魅力的な下着なのだ(「人新世のパンツ論⑯―特別編I・ペペッティ、ココッティ、スキャンティ」参照)。
 
 ということでいうと、実はジョッキーの男性用アンダーウェアは、「Yフロント」のブリーフだけではなく、このスキャンティもまたおしゃれで、セクシーなのである。
 

ジョッキーのセクシーなスキャンティ

 昨年、そのジョッキーの貴重なスキャンティ(未開封のデッドストックもの)を、私は入手したのだった。
 

入手できたジョッキーのスキャンティ

 
「JOCKEY SLIM GUY SKANTS BRIEF」
 
 色は水色で、サイズはS。
 腰から鼠径部までの面積が、《男性部》の平均的な大きさの比率からしてギリギリで際どく、Sサイズだったせいでもあるのだが、陰嚢が少し持ち上げられ、くっきりと陰茎とグランス(亀頭)が浮き上がって見える状態となり、これほどセクシュアリティを訴えかけるパンツも珍しいと思った。
 やはり日本人が考えるパンツではなく、欧米人が生み出したパンツの、セクシーさが全面に押し出された個性なのだった。
 

微妙な透け感がたまらない魅力

 

§

 
 ジョッキーの「Yフロント」のブリーフは、クラシカルタイプとして今日でも販売され続け、そのデザインの伝統の魅力に圧倒される。どこか、律儀で高い知性が感じられ、そのビジュアルは《男性部》をインテリジェンスに保守しているかのようで、ついコレクションしてみたくなるのだ。
 
 ということで今回は、長い歴史の中で銘品を生んできたジョッキー・インターナショナルのブリーフを取り上げた。
 
 ちなみに、アルフレッド・ヒッチコック監督の映画『フレンジー』(“Frenzy”)では、主演のジョン・フィンチ(Jon Finch)さんがジョッキーの「Yフロント」のブリーフを穿いている姿を見ることができる。ぜひ、興味のある方は確認してみるといい。
 
 最後にひとこと。
 現在売られているそれ以外のタイプでも、私の好みとして、「Cotton Stretch Brief」の“True Blue”の柔らかなブルーのブリーフは、たまらなく欲しい。機会があれば買い求めて穿いてみたいのである。
 

ジョッキーのスキャンティは日常的に穿きたくなる

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