隠匿の作法

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どこの馬の骨だ青沼ペトロ

『平凡パンチ』に囚われた男の哀しい享楽
 

『平凡パンチ』1972年4月3日号

 

ヘア隠しの極意

 1990年代の日本国内において、一大ヘアヌードブームが巻き起こったことをご存知だろうか(「〈再録〉樋口可南子と篠山紀信」参照)。
 ヘア(ピュービックヘア)解禁以前の時代では、出版物その他において、ヘアをさらすことはご法度であった。それが公然と解禁になった流れを指す。
 
 それまでの時代、ヘアが写っている部分は、見えないように隠す。
 
 どうやって隠していたか――。黒く塗りつぶしたり、ぼかしを入れたり、ビデオなどデジタル加工処理ができるようになってからは、モザイクで隠していたのである。もちろんこれらの手法は、今でも使われる。
 
 そうしたヘア隠しの手法について、面白く解説した記事があった。
 『平凡パンチ』(平凡出版/現マガジンハウス)1972年4月3日号(100円)。「ポルノ・フォト 隠しのテクニックと剥ぎのコツ」。
 

「ポルノ・フォト 隠しのテクニックと剥ぎのコツ」

 

10種の隠しテクニック

 記事では、「《カクシ》の基本パターン10」と題して、10種類の隠しテクニックを紹介している。
 
①黒の角ベタ
 基本中の基本はこれ。スミ(墨)、もしくは黒インクで矩形のベタとする。
 いかにも隠している感じがするし、そうでなくてもポルノらしさの代名詞的な存在感を醸し出している。
 
②黒のマジックインク
 インクのベタよりも、手軽に隠すことができるワザ。印刷ではなく、既に製本された紙に、直接マジックインクで塗りつぶすのである。
 しかし大抵、黒のマジックで塗りつぶしただけでは、透けて見えることが多かった。いやいや、それでいいのだ。
 
③削って隠す
 ペン先で紙やフィルムを直接削って隠す手法。あるいはこする。
 このやり方だと、雑に削れば隙間からヘアやワレメがうっすら見えることがある。意図してそうしていただいている場合もあった――と思われる。その意味はおわかりだろう。
 
④丸い形でぼかす
 真っ裸が登場する映画のシーンでは、よく股間にこれが現れた。丸い形のぼかしが入るのである。
 ぼかしているので、黒いヘアは何となくわかる、というものでもなかった。
 

“不許可”のイモ判風は自主規制ながらのアイデア

 
⑤部分的にハイキー
 フィルム現像の工程で、その部分だけハイキーにする。つまり、長く現像液に浸けて露出過多にすること。そうすると白飛びして白くなる。
 
⑥ハートマークで印刷する
 塗るのではなく、別の印刷原稿(ハートマークやその他のマーク)をそこに貼るだけ。
 マーク選びにもセンスが問われる。ヘタなマークを貼れば、かえって品がなくなり、全体のエロい雰囲気を台無しにしてしまうこともある。
 
⑦イモ判ハンコ型
 印を押したようにして、そこだけ強固に見せないギャグにするパターン。
 検閲性を思わせ、確かにギャグにはなるが、やりすぎると鼻につくやり方だ。
 
⑧文字入れ
 ベタなインクで四角形に塗り、その上に文字を入れるパターン。
 
⑨手描きパンツ
 パンツのイラスト、もしくは写真で貼りつけて、全く不自然でないようにしてしまう。
 
⑩似合わないパンツ
 わざと男モノのパンツを貼りつける。とにかく隠せればいいという話で、それ自体に意味はないだろう。
 

海外ポルノ雑誌による実例。こすって隠しているが…。

 

剥ぎのコツ?

 記事の別の欄では、「《仮面》はこうして剝げ!」という見出しで、黒のマジックインクで塗られた部分を剥いで、中のモノを見ようという魂胆(?)を解説している。
 
 使うのは、バター、ライターオイル、マニキュアの除光液。
 
 要は簡単、この3つを使って、マジックインクが塗られた箇所をこすればいいだけのこと。
 ただし、時間をかけて丁寧にこすれ――とある。焦ってゴシゴシこすれば、当然紙がボロボロになり、剝ぐどころか自分でさらに中のモノを消してしまうことになる。
 

お尻のアナだろうがワレメだろうがこすっても見えている?

 

隠しテクニックはエロの極意

 総じて、隠しのテクニックの最も重要なこととはなにか。
 
 それは、元のヘアの形とそっくりな色と形で隠してはいけないということ。
 そもそも、ヘアはたいてい黒色だ。黒のインク、もしくは黒のマジックインクを使い、まさにヘアの輪郭通りに細く塗れば、ヘアそのものを描いていることになるではないか。
 いや、それはご法度。
 
 やはり隠す際の形は、円形、楕円形、四角形が好ましいということになり、ヘアの形を想起させない隠しパターンがベターだということになる。
 
 以上、『平凡パンチ』から隠匿の作法を紹介した。

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